これが噂の!?
何とも刺激的なタイトルである。
「モーツァルトよりメタリカを聴け」という挑戦的なキャッチコピーも然り。
これは、脳科学者・医学博士・認知科学者・・・等、複数の肩書きを持つ中野信子氏の最近の著書である。
最初に言っおくと、私は最近まで彼女のことを全く知らなかったし、当然彼女が出した本を読んだこともなかった。
ただ、本のタイトルとキャッチコピーに惹かれてたので読んでみた。
私以外のメタラー諸氏の中にも、きっとこの本が気になっている方がいるだろう。
今日はこの本を読んだ私の感想を述べていく。
メタラーは読む必要なし
結論から言えば、メタラーが読んでもあまり得るものはない、と断言できる。
(時間とお金に余裕がある人、又は自分で実際に読んで確かめてみたいという方はご自由にどうぞ)
本書は4つの章から成り立っていて、第1章では著者のメタル遍歴とメタル愛が語られる。
何しろ、「わたしを救ってくれたメタル」である。
メタルとの出会いとか、メタルがどのように著者の人生に影響を与えたのかとか、著者がメタルによって救われた場面などが詳細に語られており、ここはまあ面白い。
メタラーとして共感できる部分も多々あった。
それに、その人が何をきっかけにメタルにはまったのかを知るということは、いつでも興味深いものだ。
第2章以降は、脳科学の観点からメタルが持つ魅力を分析しようとしたり、メタルの可能性というものを提示しようとしているのだが、「~という研究ではこうだ」という紹介や著者自身の推測が多く、客観的なデータは乏しく、根拠が薄い。
かなりこじつけていたり、「そこは別にメタルじゃなくても他のジャンルの音楽でも良くね?」って箇所もある。
タイトルにある<天才は残酷な音楽を好む>という部分についても本の中で明確に述べられている訳ではなく、ちょっと意味不明。
メタルの効能を科学的根拠に基づき、解き明かしてくれるのかと思ってこの本を手に取ったのだが期待外れだった。
本書の中で取り上げているアーティストも偏りがあるしね。
この世にメタル・アーティストは無数に存在するし、人それぞれ好みや相性ってものがあるから、ある程度偏ってしまうのは仕方がないことなのだけれど・・・。
誰に向けて書かれた本なのか?
まずはメタラーだよね。
この本のタイトルを見て、飛びつくのはまず私のようなメタラー。
だって、『メタル脳』だよ!
おまけに、帯には「モーツァルトよりメタリカを聴け!」だもの。
こりゃ、メタルファンは食いつくでしょ。
次に、著者のファン。
中野信子先生が新しい本を出したから読まなきゃっていう、ファンの人達。
そして、メタラーでも著者のファンでもないその他の人達。
どのメタルを聴けばいいの?
ところで、メタラーじゃない人がこの本を読んだ後で仮にメタルに興味を持ったとしよう。
「脳科学者の先生がメタルがいいって言ってるからメタルを聴いてみよう」って。
そう思ったところで、一体何を聴いたらいいのか全く分からないだろう。
一口にメタルと言っても、その中には多数のサブジャンルもあるし。
え、何?
メタリカを聴けって書いてある?
でもメタリカのどの作品を聴けばいいの?
メタリカに限らず、どんなアーティストだって昔と今じゃ音楽性が変化しているものだ。
全くメタルを知らない素人には作品を選ぶのにもハードルが高過ぎるでしょ。
巻末付録に<中野信子お薦め!!メタル・ディスク・ガイド>みたいのを載せても良かったのではないかな。
<メタル入門編まずはこの10枚>とか、<シチュエーション別で選ぶメタルアルバム>とか、<怒りをコントロールする10枚!>とか、<オキシトシンの分泌を促す10枚>という感じでお薦めを載せておくと、本を読み終わった後すぐにYouTube等でチェックできるので親切だと思うのだけれど。
それが中野先生の個人的な趣味と嗜好が反映されたチョイスだったとしても、「脳科学者の中野信子先生がお薦めしてるんだから」って疑わずに信じて聴けば、その内の何割かは本人の思い込みと暗示で効果が出るかもよ!?