爆裂スラッシュ・メタル!その名はSODOM
今日はドイツ出身のスラッシュ・メタル・バンド、SODOMが1989年にリリースした3枚目のアルバム『Agent Orange』を紹介します。
SODOMは現在も活動を続けている大ヴェテランであり、同じくドイツを代表するスラッシュ・メタル・バンドのKREATOR、DESTRUCTIONと共に、日本では<ジャーマン・スラッシュ三羽烏>と呼ばれていたものです。
アルバム・タイトルの<Agent Orange>とはベトナム戦争でアメリカが大量散布した枯葉剤のことです。(これには猛毒のダイオキシンを含んでいたため、先天性奇形や様々な障害を引き起こし、その影響は現在にも及んでいる可能性があると言われています)
そしてアルバムのアートワークがこちらです。マジックドラゴンの名で呼ばれたAC-47という機体の内部が描かれ、そこにはガンポッドでベトナム軍を攻撃するアメリカ兵の姿が。そして左上の飛行機から散布されているのが枯葉剤であるAgent Orangeでしょう。その煙に髑髏顔が浮きでいるのがまた不気味ですね。アートワークを手掛けたのは私の大好きなイラストレーターであるアンドレアス・マーシャル氏。
レビュー
SODOM『Agent Orange』(1989年)
(1)Agent Orange
(2)Tired And Red
(3)Incest
(4)Remember The Fallen
(5)Magic Dragon
(6)Exhibition Bout
(7)Ausgebombt
(8)Baptisim Of Fire
(9)Don't Walk Away(TANK cover)
Produced by Harris Johns
Tom Angelripper(vo/b)
Frank Blackfire(g)
Chris Witchhunter(d)
お気に入り度:
★★★★★ ★★★(8/10)
初期の頃の彼らはどちらかと言えばブラック・メタル寄りの音楽をやっていましたが、ここにきてSODOM流スラッシュ・メタルが確立! プロデューサーに名手ハリス・ジョンズを迎えてサウンドもソリッドでタイトになりました。歌詞もベトナム戦争をテーマとした(1)や(5)をはじめとして、死・環境破壊・近親相姦等の社会的な問題を扱っています。
SODOMの楽曲の特徴は、1曲の中で疾走とミドルを巧みに使い分け、そこにドラマ性を生み出していくところだと思います。重戦車が突進していくかの様な豪快かつ鋭利なリフと2ビートで爆走していくのは聴いていて実に爽快! トム・エンジェルリッパーの極悪ヴォーカルも迫力があります。本作は初期の傑作とされている、スラッシュ・メタルの名盤です。
タイトル曲でもある名スラッシュ・チューン(1)「Agent Orange」、緩急を繰り返しながら爆走し、中間部にアコースティック・ギターによる美しいパートを挟み込むという驚きの(2)「Tired And Red」、(1)と同じくベトナム戦争を題材とした(5)「Magic Dragon」、MOTORHEADへの憧れを音にしたようなスラッシュ+ロックンロールチューンの(7)「Ausgebombt」などが特にお薦め!
スラッシュバンド名は知っているけど、まだ聴いたことがないというスラッシャーやメタラーの方は是非!
「Agent Orange」
本作を代表する直下型スラッシュ・チューンの名曲! ミドルテンポのリフで始まり、爆走していくカッコ良さよ! 緩急のつけ方も天才的なのです。
「Magic Dragon」
ミドルテンポで始まり、途中で一気に加速して駆け抜け再びミドルに戻るという構成。ギターソロもクール! 先にも書きましたが、タイトルの<Magic Dragon>とはベトナム戦争時に対ゲリラ戦に投入された機体の愛称で、AC-47という輸送機に武装を施したいわゆる、ガンシップのことです。
「Ausgebombt」
MOTORHEAD風に突き進む、スラッシーなロックンロール(?)。或いは、キャッチーなハードコア。<ausgebombt>はドイツ語で、爆破・爆撃の意味があります。