第5話のあらすじ
大量のスギ花粉が体内に侵入!
スギ花粉を排除するため、現場へと急行した
白血球(好中球)は、そこで“記憶細胞”と居合わせる。
記憶細胞は免疫記憶を保持しているリンパ球である。
現場の光景を目の当たりにし、なぜかあたふたしている記憶細胞。
「なんてこった! これじゃまるで、言い伝えと――」
記憶細胞が言う“言い伝え”とは……?
(公式サイトより)
スギ花粉襲来!!
毎年恒例の、花粉症!
冒頭、スギ花粉が眼の粘膜に飛来するさまが描かれていますが、隕石が地上に激突するような描かれ方をされていて迫力がありました。
また、ここのBGMが大仰過ぎて好き!!
瞬きが間に合わなかったのか~、と悔しがるヘルパーT指令が何かイイ!
湖(粘膜)に落下したスギ花粉の中から、スギ花粉のアレルゲンが登場します。
こうして、大量のスギ花粉のアレルゲンが眼から体内に侵入するのです。
このアレルゲンも、見た目だけなら可愛いんですがね。
外敵の侵入を知らせるアナウンスが流れます。
丁度、網膜付近にいたのが、主人公赤血球。
と、そこに「スギー!」と言いながら、アレルゲンが登場します。
逃げ惑う赤血球を救ったのは、我らが白血球さん。
ナイフの一撃でスギ花粉のアレルゲンを退治してしまいます。
「それ何ですか?」という赤血球の質問に対し、「とにかく喰えば分かる!」と、アレルゲンにかぶりつく白血球さんが見もの。
白血球には細菌や異物を細胞内に取り込んで分解する食作用(貪食)があるんですね。
記憶細胞と代々伝わる言い伝え
そこへ、記憶細胞と名乗る新キャラが登場します。
記憶細胞
抗原の免疫を記憶しているリンパ球。同じ細菌やウイルスの再度の侵入に備えている。
白血球さんに倒されたスギ花粉のアレルゲンを見て、「これじゃあ、言い伝えと同じじゃないか!」と慌てています。
「何を慌ててるんだ? スギアレルゲンは危険な抗体ではないだろう?」と言う白血球さんに対して、記憶細胞は答えます。
「俺たち記憶細胞に代々伝わる言い伝えがあるんだ。宇宙より災いの流星、飛来せし時、山は怒り、大地は荒ぶり、海は蠢く!」
「つまり、大噴火、地殻変動、大洪水が一気に起こる! 未曾有の大災害に見舞われルるんだぁぁ!」
Ige抗体
その頃、スギ花粉アレルギー緊急対策本部では被害状況を伝える電話が鳴りっ放しでした。
アレルゲンの侵入増加とそれに伴う被害拡大の報を受けて、秘密兵器B細胞を現場に急行させるヘルパーT指令。
B細胞は細菌やウイルスの抗原に対して、抗体という武器を作って戦う細胞なのです。
今回はIgE抗体という武器を発射して、次々とスギ花粉のアレルゲンを倒していきます。
ピピピピという音と共にB細胞の持つライフルのゲージがマックスになって、IgE抗体を発射するのがカッコいいと思いました。
B細胞もドヤっとしてましたね。
これで問題は全て解決するかに見えましたが、実はこのIgE抗体の使い過ぎでもっと酷いことが起こるらしいと記憶細胞は言うのです。
マスト細胞とヒスタミン
その頃、研究室にいるマスト細胞は、体内のIgE抗体値が急上昇しているのをモニター画面で確認します。
これは大変とばかりに、使われたIgE抗体に相応する量のヒスタミンを放出させます!
マスト細胞は過剰に作られたIgEの刺激に対してヒスタミンを分泌します。
ヒスタミンというのは異物や組織の損傷を認識したマスト細胞などから分泌される化学伝達物質のことで、血管内皮細胞の間隔を広げ、白血球たちの遊走性を高めたり、腺分泌を促進させる働きがあります。
通常なら、適量のヒスタミンが分泌されて、その炎症によってアレルゲンが排除されて終わりなのですが、IgE抗体の使い過ぎにより、それに応じた大量の、身体に悪い影響を与えてしまうほどのヒスタミンが分泌されてしまいます。
でも、マスト細胞はお馬鹿な子なのではなく、ただ自分の職務というか役割に忠実に従っただけなのです。
マニュアル通りにね!!
大災害!!
ヒスタミンが洪水のように押し寄せ、分泌中枢がショート!
(爆発してますやん!!)
それにより、緊急免疫システム、つまりヒスタミンによるアレルギー反応が発動!!
まずは大噴火!!
そう、くしゃみの連発です。
次に地殻変動!!
ヒスタミンが鼻の粘膜にある血管に作用して炎症を起こし、鼻粘膜が腫れ上がる。
つまり、鼻づまりが引き起こされます!!
そして、大洪水!!!
ヒスタミンが目の知覚神経などを刺激することで、かゆみ・充血を引き起こし、涙も止まらなくなります。
大噴火、地殻変動、大洪水が一気に起こる!
これがスギ花粉アレルギー!!
まさに、未曾有の大災害!!
まさに地獄絵図。
こんなことが体の中で起こっているというのか・・・!?
救世主現る・・・?
こうなってしまったのはIgEを使いすぎたからだ、いや、ヒスタミンを出し過ぎたからだとマスト細胞とB細胞は互いに責任転嫁し喧嘩を始めてしまいます。
その時、赤血球が届けてきた<球>。
その<球>が割れて、出てきたメカニカルなこいつ。
無差別に細胞たちを攻撃していきます!!!
記憶細胞は思いだす。
「世界に異変が起こった時に、どこからともなく現れる。このタイプは騒動に関わった奴を一掃する奴だ!!」
奴の名はステロイド!!
強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を持つ薬なので、ヒスタミンが引き起こした症状やアレルギー反応そのものを強力に抑える凄いヤツ。
無差別に細胞たちを攻撃していきます。
薬効が切れて行動停止するころにはアレルゲンもどこかへ消え、この世界に再び平和が戻ってきたのでした。
まとめ
いや~、カオスでしたね。
未曾有の大災害の後はステロイドという名のデストロイヤーが現れて、体内はまさに世紀末。
スギ花粉の襲来によって起こるアレルギー反応のメカニズムが非常に分かり易く描かれていました。
花粉症がインフルエンザよりも、アニサキスの時よりも甚大な被害を引き起こしていて笑っちゃいました。
白血球さんの「それぞれが自らの仕事を全うしただけなのに、こんなことになってしまうとは。こうなることが分かっていれば。いや、分かっていてもやるしかなかったが」という台詞。
それぞれが役割を果たしただけなのに、それらが裏目に出てしまう。
それがアレルギーに対する免疫反応の怖いところでもありますね。
来年の花粉症の時期になったら、またこの回を見直します。
次回第6話は「赤芽球と骨髄球」。
私としては、今この時期だからこそ、「熱中症」をやって欲しい!!
今こそ、熱中症が引き起こされるメカニズムを全国民に知らせるべき!!
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