龍凰童子!
陰陽座の4年半振りのアルバム『龍凰童子』、とんでもないことになってます!
全ての楽曲のクオリティが尋常じゃないことになっていて、毎日のように聴いていますが、聴く度に新しい発見があって全く飽きないです。
本当に素晴らしい!!
今日はその『龍凰童子』のレビューです。
アルバム・タイトルについて
『龍凰童子』というアルバム・タイトル。
これについては、リーダーの瞬火氏が各種メディアのインタビューで答えているように、陰陽座のことを指しています。
陰陽座の家紋には龍と鳳凰が使われていて、そこから〈龍と鳳凰の力を纏った童子(鬼)=陰陽座〉となる訳です。
CDのキャッチコピーにも、「龍と鳳凰の魂を纏い、服さぬ鬼として罷り通る者」と記されています!
レビュー
陰陽座『龍凰童子』(2023年)
(1)霓(にじ)
(2)龍葬(りゅうそう)
(3)鳳凰の柩(ほうおうのひつぎ)
(4)大いなる闊歩(おおいなるかっぽ)
(5)茨木童子(いばらぎどうじ)
(6)猪笹王(いのささおう)
(7)滑瓢(ぬらりひょん)
(8)赤舌(あかした)
(9)月華忍法帖(げっかにんぽうちょう)
(10)白峯(しらみね)
(11)迦楼羅(かるら)
(12)覚悟(かくご)
(13)両面宿儺(りょうめんすくな)
(14)静心なく花の散るらむ(しずこころなくはなのちるらん)
(15)心悸(ときめき)
Produced by 瞬火&陰陽座
黒猫( vo)
瞬火(vo/b)
招鬼(g)
狩姦(g)
満足度:99%
待ちに待ったニューアルバムは全15曲という、陰陽座史上最多のヴォリュームとなっています。その理由については、まずアルバム候補曲が30曲位あったらしく、ディレクターに曲を選ぶのが大変だという話をしたら、前作から4年半振りになるから入れたいだけ入れていいよと言われたということ。そして、どれだけ入れてもアルバムの質は下がらないという確信があったことを瞬火氏はインタビューで語っています。そして実際に1曲1曲のクオリティが凄すぎることと、曲順も完璧であり、聴いていて長いなという印象はなく、アルバムの最初から最後まで深い感動と興奮を覚えながら、聴き込むことができる作品です。
アルバムのオープニングを飾る美しいインストゥルメンタル(1)「霓」は雨が止んで、空にうっすらと虹がかかっている情景が目に浮かび、そこから黒猫嬢の歌唱で始まる(2)「龍葬」へ。完全復活、いや、さらにレベルアップした黒猫嬢の歌唱に鳥肌が立ちます!この疾走チューンでは久々に招鬼氏と狩姦氏によるツインリードのハモリも炸裂。
間髪入れずに始まる(3)「鳳凰の柩」はメタリックなアップチューンで、切ないメロディを謳い上げる黒猫嬢の美声に否が応にも鋼鉄の心が震えます! 黒猫姐さんが元気に闊歩している姿が想像出来てしまう(4)「大いなる闊歩」はライヴでも盛り上がることでしょう。イントロの琴の音からスラッシーに雪崩れ込む、MVにもなった(5)「茨木童子」、アグレッシヴな中にもキャッチーさと哀愁を持ち合わせた(6)「猪笹王」、どこかコミカルさも感じさせる(7)「滑瓢」、初期~中期の頃にありそうな作風の(8)「赤舌」と優れた楽曲が次から次へと繰り出されます!
ハイライトは(10)「白峰」。元になっているのは江戸時代に上田秋成によって書かれた古典『雨月物語』の一篇「白峯」です。これは日本三大怨霊の一人として知られる、崇徳院の亡霊と西行法師が和歌と言葉で議論するという物語で、これを音楽で表現した11分23秒の大作。美しく、また物悲く、ドラマティックに展開していきます。全く長さを感じさせないのが凄い!
そして、これまでに「卍」・「神鳴忍法帖」・「氷牙忍法帖」という曲で語られてきた、〈己の運命に葛藤する無敵の女忍者シリーズ〉の最後の死闘を描いた(9)「月華忍法帖」と(14)「静心なく花の散るらむ」は共に切なさ全開の疾走チューンで感動的です。
アルバムの後半も勢いは落ちることはありません。黒猫嬢の優しく・澄んだ歌声の素晴らしさを堪能出来るバラード調の(11)「迦楼羅」、瞬火氏のヴォーカルをフィーチュアした泥臭いハードロック(12)「覚悟」、メロデス的なクサいリフとメロディが舞う(初期イエテボリ臭が漂う)ミッドチューン(13)「両面宿儺」と、一切ダレること無く進みます。そして、ラストの「心悸」は爽やかな曲で、黒猫嬢の優しい歌声が響き、アニソン風の歌メロが実に心地良いです。
圧倒的!! 陰陽座らしさを保ちつつも、新機軸も打ち出し、こんなにもクオリティの高いアルバムを作り出せるのは本当に凄いことです! 早くも今年のベスト・アルバム候補となりました! 個々のパフォーマンスが素晴らしいのは今に限ったことではありませんが、特に復活した黒猫嬢のヴォーカルの表現力はこちらの予想を遥かに超えていて、格の違いというものを感じさせられました。