この作品、題名だけは知っていましたが観たことありませんでした。
昔、私がまだ子供の頃、地元の書店の外国文学の棚に原作小説が並んでいたという記憶があります。
いつも気になっていたんですよね。
このタイトルに。
結局、読みませんでしたが。
映画のテーマ曲で、あまりにも有名すぎる「愛のロマンス」は知っている人も多いかと思います。
音楽の教科書にも載ってませんでしたっけ?
その辺の記憶は曖昧ですが。
このあいだ、アマゾン・プライム・ビデオで何か面白そうな映画はないかなと検索していた時に、偶然この作品を見つけました。
1952年のフランスの映画で、戦争で孤児となった少女ポーレットの運命を描いた作品です。
以下あらすじと感想を。
ネタバレ含みます。
この作品は反戦映画とされているようですが、私にはそうは感じられませんでした。確かに戦争が原因でポーレットは孤児になるのですが、彼女が身を寄せたドレ家での日常には戦争自体が描かれていませんでしたから。それよりもポーレットが少年ミシェルと行う無邪気な<遊び>を通じての孤独からの現実逃避とやがて訪れる<現実>の物語と感じました。あくまでも戦争はきっかけにしか過ぎません。
ポーレットはパリからの疎開の途中で、ドイツ軍機の機銃掃射で目の前で両親と愛犬を殺されてしまいます。両親が死んだことは実感がなく、それよりも、愛犬の死に心を痛めるのですが、それはまだ幼過ぎて死というものを理解することが出来ないからでしょうか。
見知らぬ地を彷徨っていたポーレットは農家の少年ミシェルに助けられ、その家族ので短い間を過ごします。ポーレットは愛犬のための墓を作り十字架を立てます。その愛犬が寂しくないようにと、他の小動物の死体も埋めていきます。2人が作る秘密の墓場は徐々に拡大していきます。ポーレットは十字架に異常なまでの執着心を見せ、綺麗な十字架を欲しがり、ミシェルはポーレットを喜ばせたくて教会や墓地からも十字架を盗み出してしまいます。やがてそれは見つかってしまいます。
盗んだ十字架を使って秘密の墓場を作ること。これが2人が禁じられた<遊び>なのです。
ミシェルはポーレットのために墓場に沢山の十字架を立て、草花を使って綺麗に飾りつけるのですが、その完成形を見ることなくポーレットは孤児院に送られるために警官に連れて行かれてしまいます。十字架のありかを言わないミシェルは父親に酷く折檻されました。しかし、ポーレットが孤児院に送られると知って十字架のありかを話します。話せばポーレットを家に置いてくれると父親が約束したからです。しかし、その約束はいとも簡単に破られてしまうのでした。
自暴自棄になって、集めた十字架を川に投げ捨てるミシェルが可哀相でありませんでした。しかもその時、遠くでポーレットを連れて行く車の音が聞こえてくるのですから。
大人の世界の前には子供は余りにも非力なのです。
ミシェルはポーレットの持ち物だった飾り物を、秘密の墓場がある水車小屋に住んでいるフクロウに託します。「100年間、これを預かってて」と。
ラストシーンでは孤児院に送られるのを待つポーレットが、その人混みの喧騒の中で急にミシェルの名を連呼し、突然「ママ」と発します。ポーレットが死んだ母親を求めて呼ぶのは作中ではこれが最初で最後。母親の死を受け入れ、自分が本当に孤独であることが分かった瞬間なのでしょう。母とミシェルの名を叫びながら、人混みの中に走り去っていくところでこの映画は終わります。
何とも後味の悪い結末で、あの描き方だと、孤児院のシスターとも再会出来そうになく、ポーレットはこの後どうなったのかなあと色々と考えてしまいました。親切な人がポーレットを保護してくれるかもしれません。あるいは悪い大人に捕まってしまうかも知れません。
原作小説の方も読んでみようと思いました。
2020.6.19追記 小説版の感想です。